最近、メディアスタジオ編集室のDVDリストに、映画・映像史において重要な海外のドキュメンタリー作品群が新たに加わりました。それぞれを簡単にご紹介します。
まず、『Don’t Look Back』と『The Kennedy Film』は、いずれも1960年代にアメリカで制作されたダイレクト・シネマの代表作です。また、『ナショナル・ギャラリー』を監督したフレデリック・ワイズマンもこの潮流の中から現れ、1960年代後半から現在まで活躍を続けています。一方、同じ1960年代でもニューヨークを拠点に、日記スタイルの作風を開拓したのが『ウォールデン』のジョナス・メカスです。これらの作品は、いずれも当時のアメリカ映像界のニューウェーブですが、まったく違った表現方法を確立しました。
同じ頃、フランスではクリス・マルケルが活動しており、1962年に作られた写真画像による実験的作品が『ラ・ジュテ』です。隣国ドイツの映画界では1970年代からニュー・ジャーマン・シネマが台頭しましたが、なかでもヴィム・ヴェンダースは『東京画』や『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』といったドキュメンタリーも積極的に手がけました。遠く離れたチリにも1970年代に新しい動きがあり、『チリの闘い』は同国の政治的動乱を克明に切りとった作品です。最後の『クローズ・アップ』は、アラブ圏のイランの名監督であるアッバス・キアロスタミによる1990年のドキュメンタリー映画です。
このように、世界各国でさまざまな映像表現の潮流が生まれ、それらの制作活動はお互いに交錯しあっていると言えます。もちろん、メディアスタジオでは日本や中国といったアジア圏の作品も数多く揃えており、上記の作品群とのつながりを見いだすこともできます。興味を持った方は、ぜひ編集室へ足を運んでみてください。
(森田典子)