2019年度より、日笠昭彦先生による「メディアスタジオ実習Ⅰ/メディア・ジャーナリズム論実験実習Ⅶ」(学府・教育部授業)が開講されています。この授業ではメディアスタジオの機材を活用しながら、一つのドキュメンタリーを制作します。学生たちはいくつかのグループに分かれて企画・取材・撮影・編集を行い、そのなかで映像ジャーナリズムとは何か、社会を映し出すとはどういうことかを学ぶことが目指されています。
日笠先生は今年度から新しくこの科目を担当していただく先生で、以前は日本テレビのプロデューサーとして「NNNドキュメント」を14年間担当していらっしゃいました。「NNNドキュメント」は日本テレビ系列の29局が制作する報道ドキュメンタリー番組です。日笠先生は、全国の日本テレビ系列の記者(制作経験が豊富な人ばかりではない)の番組制作をサポートすること、つまり「伴走者」となること、が自分の役目だと仰っていました。
またそうした番組制作と並行して、講義やマンツーマン指導などのかたちで、テレビ局での記者の育成にも関わっていらっしゃるそうです。日笠先生は、こうした番組制作や記者育成の経験が今回の授業にも活かされている、とお話されていました。
さて現在、学生たちは4つの班に分かれ、それぞれテーマを決め、取材や撮影にとり組んでいます。
外国にルーツのある子どもが、現在の日本で直面している問題に迫る「隣人の子供たちは今日も取り残されている」。公共空間から路上生活者などを排除することを目的とした、“排除アート”というオブジェの実態に迫る「芸術か?暴力か?――街中の“排除アート”」。高い食品品質を求めるという日本人の傾向から、なかなか解決の兆しを見せない食品大量廃棄問題を考える「『フードロス・ゼロ!』の日本へ」。世田谷の、地域共生の場を提供するという「KYODOハウス」に注目し、人びとの繋がりが稀薄となった現代の、新しいコミュニケーションのあり方について考える「新しいコミュニティ――KYODO HOUSEの家」。
どの企画も、現代社会の問題に迫ったものでありながら、発案者の個性が反映されていて、そうしたことがとても興味深いです。紙一枚の企画たちが、これからどのような映像作品になっていくのか。今からとても楽しみです。
(鈴木麻記)