今月は、メディアスタジオのDVDの中から、広島・長崎に投下された原子爆弾の記録映画の紹介をします。
この映画は、原爆を投下した側の米国が製作の主体です。しかし、この映画の出来た経緯は、やや入り組んでいます。日本映画社という、戦中は国策会社としてニュース映画や、プロパガンダと言われる数々の戦記映画を製作した会社があります。
8月15日の終戦を迎えた後、この会社の社内では、広島と長崎に投下された爆弾のあまりの非人道性について、これは、記録を残して、国際世論に訴えようという話がまとまりました。正確な記録を残すために、日本映画社は、専門家からなる原子爆弾災害調査研究特別委員会と共に現地に入り撮影を開始。やがて、撮影は占領軍(米軍)によって中止を余儀なくされるも、交渉の結果、米国の監視下で、映画の製作が続行、そして完成を迎えました。
たとえば原題の ”EFFECTS OF THE ATOMIC BOMB” にある、EFFECTという単語が持つニュアンスひとつ取っても、今に至っても議論の対象となっています。
もと国策会社の日本映画社、国際世論への訴えかけ、米軍、この複雑に入り組んだ主体を持ったこの映画の分析については、優れた先行研究もありますが、一度自分の眼で確かめて深く考察してみる価値があります。
(山内隆治)