政治に関心があっても、選挙の現場を間近で見る機会はなかなかありません。想田和弘監督のドキュメンタリー映画『選挙』(2007年)と『選挙2』(2013年)は、そんな私たちの「見えない日常」に鋭くカメラを向けます。政界とは縁のなかったサラリーマン・山さんが、突如として自民党公認候補として立候補し、戸惑いながらも選挙戦に挑む姿を追った本作は、「観察映画」として、演出を排したカメラの視点が、かえって政治の「リアル」を浮き彫りにします。
「観察映画」とは、ナレーションや音楽、解説テロップを排し、構成も最小限にとどめて、被写体のありのままの姿を静かに記録していくドキュメンタリー手法で、想田監督はこの手法で、海外からも高い評価を得ています。
現在、まもなく実際の参議院選挙が始まろうとしています。ニュースやSNSでは伝わりきらない現場の空気や、人と人との関係の中で進んでいく選挙の姿を、これらの作品を通じて体感してみませんか?「選ぶ」私たち一人ひとりの視点を、少しだけ変えてくれるかもしれません。
(山内隆治)